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読者は問われているのだ。本書を読む「覚悟」はできているのか、と!
![]() | 魔王 |
本書の評価は、今後の日本を見据えるうえで決して回避し得ないそうした重要な諸問題に対する、国民(ないしは一個人)としてのそれなりの見識を有していることが前提になっている印象を受けるからである。むろん本書を通じて、自分なりにあらためて問い直すことは可能であろう。
前半の「魔王」よりも後半の「呼吸」のほうが私は好きだ。それは、清々しい大空とそこを自由に羽を拡げて雄飛する鷹といった自然描写が、乾き切った人間社会との鮮明な対称性をなしているせいかもしれないし、ストーリー展開における「目線」が亡くなった兄の弟の妻に移ったことで、ある種の柔らかさを帯びたことによるのかもしれない。いやそれ以上に、兄の信念・使命が弟に継承=バトンされてゆく緩やかなダイナミズムが巧みに描かれているからではないか。若い頃に両親を同時に失った兄弟間に生じた関係・心情をどう表現すべきか難しいが、永遠に心のなかで生き続けるであろう兄への「敬愛」ともいうべき価値観は尊い。社会現象に対して「諦観」や「無関心」でいることへの危険性を兄は誰よりも憂い、その姿勢は確実に弟に引き継がれてゆく。
「馬鹿でかい規模の洪水が起きた時、俺はそれでも、水に流されないで、立ち尽くす一本の木になりたいんだよ」(278頁)という弟の主張は、兄の生き様を反映した発言である。犬養の「おまえ達のやっていることは検索で、思索ではない」(263頁)というセリフも私には響くものがあった。本書の含意は実に深い。
引用元:読者は問われているのだ。本書を読む「覚悟」はできているのか、と!
![]() | 魔王 |

